小説第3弾です〜。 ――翌朝。  桂は久しぶりに目覚めが悪かった。やはり昨日の麗奈の言葉が尾を引いているのだ ろうか。桂の機嫌とは裏腹に空は青く澄み切っていた。雲1つ無い、良い天気だ。  桂は身支度を済ませ、下へ降りていった。そこにはキッチンで一足先に朝食を取っ ている父幸二がいた。 「あっ、親父おはよー。今日は早いね、何か依頼でもあるの?」  桂はキッチンのドアからひょこっと顔を出した。 「おっ、桂か。あぁ、今日は簡単な仕事だがな。」  幸二は新聞を折りたたみながら桂に言った。 「何の仕事?」 「それは教えなぁ〜い。知りたきゃ自分で考えてみな♪」  幸二は楽しげに言った。 「ふ〜ん…(いい年して語尾を伸ばすなよ…)」 「あのさぁ…。」  桂は幸二に話し掛けた。 「…ん?何だ?」 「親父はどうして母さんが死ぬ時に来なかったんだよ…。母さんはいいって言ってた けどさ。」  その質問に幸二は少し戸惑っていた。だが幸二は桂にこう言った。 「…それは探偵をしている俺にしか分からない事だな。分かりたかったら俺みたいに 探偵になってみな。そうすりゃきっと…」 「答えは…教えてくれないのか?」  桂は幸二の言葉を遮る様に言った。 「答えと言うモノは誰かに頼るものじゃない。自分で一生懸命捜して見つけた答えに 本当の意味があるんだ。だから俺はあえて桂には教えない。」  幸二は真剣な眼差しで桂を見つめながら言った。 「さて、じゃあ俺はそろそろ行くからな。」  幸二は表情を緩めてイスから立ち上がり食器を下げ、カバンを片手にキッチンを出 て行った。 「…いってらっしゃ〜い。」  桂はまだ少し理解に苦しみながらも幸二を送りだそうとした。 ――その時幸二が一言言い残した。 「あまり女の子を外に待たせんなよ。じゃあなぁ〜。」 「…!?ちょっと待て!おやぁ…!」  桂が幸二に叫ぼうとしたがその声は届かなかった。 「じぃ…。」  残ったのは桂が途中まで叫んでいた声だけだった。 「…ま、まさか!」  桂は急いで玄関へと走り出した。そして玄関の扉を開けるとそこには麗奈が家の門 の前で待っていた。 「…(懲りないヤツ…)。」  桂はもう呆れるよりも先に尊敬さえ覚える様になってきた。 「…何してんだよ。」  桂の言葉に麗奈はすぐに反応した。 「あっ、綾瀬君おっはよ〜♪」  麗奈は桂に向かって大きく手を振った。 「はぁ…しゃあないなぁ。」  桂は早めに朝食を取り、ドアの鍵を閉め学校へ向かった。   「どう?探偵部に入る気になった?」  通学途中の道端で麗奈が桂に言ってきた。 「…さぁな。気分次第。」  桂は淡々と答えた。 「あっ!」  麗奈は突然叫び出した。 「なっ、何だよ!?」  桂は一瞬驚いたがその後は冷静に麗奈に問いただした。 「昨日までは全く入る気になってなかったのに今日は『気分次第』って言ってくれた ♪」 「べ…別に意味は変わらないからなっ!」  桂は焦りながら麗奈に言った。 「はいはい♪」 「…あのなぁ。」  そうこうしている内に桜ヶ丘学園が見えてきた。 「じゃあねぇ〜♪綾瀬君ならいつでも歓迎するよ♪」  麗奈は桂より一足先に走り出していった。 「…ふぅ。」  桂は空を仰いだ。1日が始まってやっと落ち着いた時間を過ごせるのだ。 ――が、桂に「安らぎ」の文字は無かった。 「よっ!桂!」  桂の肩を軽く叩き、朝から元気が良く、歯切れの良い声の持ち主のこの男。『安原 芳明(やすはらよしあき)』だ。 「や、やぁ…芳明。」 「ん?どうした?朝から元気ねぇなぁー。」  安原はもう一度桂の肩を叩き、桂に顔を近づけた。 「なっ、何でも無いって。ホントに。」  今度は桂が安原の肩を軽く叩いた。 「そうかぁ!?…まぁ、良いけどな!ところでお前テニス部入らねぇか?」  安原が桂を勧誘した。が、 「いくらお前の頼みでも俺は部活に入る気はさらさら無いからさ。」  桂は淡々と答えた。 「勿体ねぇなぁ。お前なら少し練習すれば何だって出来ると思うぜ!?」 「はいはい、お世辞ありがとうね♪」  桂は安原の誉め言葉をさらりとかわし、歩く速度を速めた。 「お世辞なんかじゃないって!マジで!」  桂に歩く速度を合わせ、身振り手振りを使って必死に交渉する安原だったが結局交 渉は決裂に終わった。 「じゃあ何で部活入ろうとしねぇ〜んだ?」  そこで安原は桂の真理を追求した。 「何でって…ただ面倒臭いだけだからだけど?」  安原は少し拍子抜けした。 「そ、それだけかよっ!?」 「…?それだけだけど?」 「だったら入った方が良いってぇ〜!」 「嫌だ。」 「…はぁ、やれやれ。」  こうして二人が話しているといつのまにか教室に着いていた。 「おはよー。芳明、桂。」  教室に入り、二人に挨拶をしてきた男『斎藤龍一(さいとうりゅういち)』。短い 髪で見た感じも爽やかスポーツ青年だ。 「よう、斎藤。お前いっつも早いなぁー。」  安原が斎藤を感心すると、 「まぁ、しょうがないよ。バスケ部の朝練はキツイからな。俺達1年だからその後の 後片付けも辛いしねぇ。今日も誰か後片付けやってるだろ。今日は当番じゃないから 嬉しいけどね♪」  斎藤はいつもの事なので体が覚えてしまったのだろう。何とも無い様子で2人に 笑った。 「部活…ねぇ。」  桂はボソッとつぶやいた。この言葉を安原は聞き逃さなかった。 「そうだ!部活だぁ!テニス部へ来るんだぁ桂ぃ〜!」 「だから行かないっつーの。」  桂は笑いながら安原につっこんだ。 「じゃあバスケ部か?」  今度は斎藤が笑いながら桂を勧誘した。 「お前らなぁ…」  また桂は笑いながらつっこんだ。 ――ガラガラッ。 「ほらほら席に着けよ〜。」  ここで担任の先生が入ってきた。富永先生は温和な先生で生徒の間からは人気があ る。 「じゃあ配布物を配るから…あっ。」  富永先生は何かに気付いた。配布物を配ると言って何かに気付いたのだから大方の 想像はつく。 「あははぁ…持ってくるのを忘れてしまったよ。綾瀬、悪いけど取って来てくれない か?」  富永先生は配布物を持ってくる役に桂を指名した。 「あ、はい。分かりました。」 「ごめんなぁ、頼んだよ。僕の机の上にプリントが積み重ねられてあるから。」  富永先生はすまなそうに桂に任せた。  そして桂はドアを開け、2階にある職員室へ向かった。1年の階は四階なので多少 桂は面倒臭かったがゆっくり足を進めていった。  一旦ここで場面は桂のクラスへ戻る。 「せんせ〜い。何のプリントだったんですか?」  ある男子生徒が富永先生に問いかけた。 「あぁ、近所にある鶴橋(つるのはし)高校で生徒の過激な行動が問題になっていま すよ、って言う内容なんだけどな。」 「俺達はそんな事ないない♪」  何事も無い内容だと思われていたプリント…しかしこの内容通りもうすぐこの桜ヶ 丘学園に事件が起こるのだった…。                                 つづく…