遅くなってすいません…小説第2弾です。 今回は推理はナシです…(^^; ――放課後。 「…ぁあーーー。」  桂は大きく背伸びした。 「ふぅ、今日は疲れたな。あの麗奈って女…いないよな…?」  桂は辺りを見まわした。幸い彼女の姿は無い。 「…はっ、さすがに無理だと諦めたかな。」 「なかなか往生際がいいでしょっ?」 「そうそう…なかなか…って、え!?」  桂はもう一度辺りを見まわした。が、やはりそこに彼女の姿はない。 「…疲れてんのかな…?早く帰ろ。」  夕日に照らされる桂の後ろ姿はどことなく情けなかった。 …しかしあの麗奈が諦めるだろうか?否。諦める訳がない。あの昼休みでの一件はま だまだ序章にしか過ぎなかったのだった。 「ただいまぁー。」  桂は自宅のドアを開けた。 「おっ、お帰りー。そう言えば客が来てるぞ。」 ソファーにゆったりと腰掛け、新聞を読みながら紅茶をすすっている名探偵、もとい 桂の父親の綾瀬幸二がそこにいた。 「…客って?」  桂は不思議そうに尋ねた。桂は友達を家に入れたことは数えるほどしかないのだ。 「おまえいつの間に探偵部に入る気になったんだ?まぁ、さすがに俺の子だな。」 「へ!?俺、前にも言ったと思うけど親父の跡を継ぐ気はないって…まさか!」  桂は急いで階段を駆け上がり自分のドアを開けた。 「やっほー。」 そこには麗奈がいた。  桂は肩をすくめてとりあえずしょっている荷物を下ろした。 「…何の用だよ。」  桂が面倒くさそうに麗奈に聞いた。 「ねぇ。探偵部…」 「断る。」  麗奈が発言をしている途中に桂がその発言をかき消してしまった。 「なんで探偵部…と言うかそんなに推理と言うか…う〜ん、嫌いなの!?」  麗奈が問いただした。 「きちんと言葉を決めてから喋れよ。…俺は何度も事件現場を見てきた。そして親父 の推理振りもこの目でよ〜く見てきた。」 「へぇ〜。あの名探偵の推理振りを…いいなぁ〜。」 「つい最近になって思ったんだけど…親父って凄いなぁ〜、って。」 「はい!?」  麗奈は唖然とした。 「いや…さ、俺いっつも親父と一緒にいたから親父があんなに凄いなんて分からな かったんだよ。普段は飯作ってくれたり洗濯してくれたりして普通の親父なんだけ ど…。」 「あ、そう言えば綾瀬君、お母さんは…?」 桂はその言葉を聞くと、寂しげにうつむいてしまった。 「ご…ごめん。」  麗奈は行き過ぎた発言を後悔した。 「母さんは3年前病気で死んだ。ガンだった。その時に親父は母さんの元に来なかっ たんだ。」 「え…!?」 「親父はちょうど時効寸前になっている犯人の捜索の依頼を頼まれていたんだ。犯人 を取るか、愛する人を取るか…結局親父は犯人を選んだ。その時母さんは俺に向かっ てこう言った…。」 ――時は3年前、ある病院の一室にさかのぼる。  そこには病室のベッドで横たわっている桂の母、そして主治医と看護婦、そして今 にも泣きそうになっている桂がいた。 「あの人を責めないでね…。あの人は…これ以上の罪を増やしたくないから犯人の所 へ行ったんだから…ね。」  桂の母の息遣いが激しい。恐らく最後の力を振り絞っているのだろう。  そして桂の母は静かに息を引き取ったのだった…。 「母さん…。」  桂は泣きながら母の寝ている布団にうずくまる事しか出来なかった…。 ――そして又場所は桂の部屋へ戻る。 「俺は…大切な人が自分の元から離れてしまう時にちゃんとこの目で見届けてあげた いんだよ。」  桂は自分の部屋の窓から見える都会の町並みを麗奈から目をそらす様に体を向け、 ただ静かに見つめていた。 「そっか…ところで大切な人って今いるの?」 「な…何言って…!い、いる訳ないだろっ!」  桂は頬を赤らめて麗奈にきつく言った。 が、しかし。 「…ふ〜ん。(ははぁ〜、こりゃいるな。)」  麗奈にはそんなことお見通しだった。 「ねぇ、桂君のお父さんが犯人を選んだ理由はこれ以上他の人の罪を増やして欲しく ないからだよね?」  麗奈は確認する様に言った。 「うん…まぁ。」  桂はうなずいた。 「もし桂君のお父さんがお母さんの所に行ってたらって考えたことある?」 「…あぁ。母さんが嬉しそうに逝けただろうなって…。」 「違うなぁー、それ。」 「!?」  桂は驚き、目線を麗奈に向けた。 「何でだよ、どこが違うってんだよ!?」 「桂君のご両親はお互いに愛し合っていたから結婚したんだよね?」 「あ、当たり前だろ!そんなこと!」  桂は麗奈に背を向けた。 「だったらお母さんはむしろお父さんが来たら悲しんだんじゃないかなぁ…。」 「それは俺には分からない、分かりたくもないし考えたくもない…。」  桂は静かに言った。窓から夕日が差し込み桂の周りから赤い光が溢れていた。それ は悲しそうな後ろ姿だった。 「お母さんは探偵をしているお父さんがとっても好きだったんだと思う。確かにお母 さんも来て欲しいと思った事もあると思うよ。でも本当に探偵をしているお父さんが 好きだったら悲しんだんじゃないかなぁ〜…って、そう思っただけ。」  麗奈は後ろを向けている桂に向かって言った。 「…本当にそう思ったのかなぁ。」  桂は又静かに言った。 「それは分からない。私は桂君のお母さんじゃないから。ただ私の意見として、ね。 それが正しいかもしれないし間違っているかもしれない。本当の心なんてその人にし か分からないからね。」 「そうか…。」 「じゃ、そろそろ私は帰るね。」  麗奈は立ち上がり静かに桂の部屋のドアを閉めていった。  部屋にたたずむ桂はただひたすら部屋から見える空を見ていた。差し込んでいた夕 日はビルの向こうに隠れていた。そしてビルから垣間見れるわずかな光は桂の顔を照 らしながら消えていった…。 つづく…