第55回青少年読書感想文全国コンクール

夏休みといえば、読書感想文はつきものですね。
区分は自由・課題の二つで、小学校なら低・中・高学年各4冊の課題図書があります。
課題図書を購入する学校も多いと思いますが、
なかなか本の中まで目を通すのは、大変かもしれません。
お便りを作って、毎年市内の小学校の図書主任に分けています。
個人的な感想ですが、使えるところがあったらどうぞ。

教師用() 児童用(

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1・2年生 小学校低学年の部

おこだでませんように くすのきしげのり/作 石井聖岳/絵
親や先生におこられ続けている「ぼく」の毎日が、いろいろなエピソードを積み上げながら描いています。外から見ると確かに『悪い』ことなのだけれど、ぼくにしてみれば止むを得ないこと。でも『おこられ続ける』という負のスパイラルの中で、「ぼくがなにかいうと、せんせいはもっとおこるにきまってる。だから、ぼくはだまってよこをむく。よこをむいて、なにもいわずにおこられる。」という悲しい処世術を身につけてしまうのです。最後に救いがあってよかった。
 低学年の子どもたちは、自分の気持ちをうまく伝えられないこと人との付き合いがうまくいかないことを、経験しています。だから、きっと、共感する部分は多いと思います。誤解が解けた喜び、ほめてもらえたうれしさを思い出して、身近な感想文が書けそうな本です。
しっぱいにかんぱい! 宮川ひろ/作 小泉るみ子/絵
 6年間、リレーの選手として活躍してきた加奈ですが、アンカーとなった運動会で、勝ち気にはやったために、チームが失格になってしまいます。落ち込む加奈を励ますために、おじいちゃんが一計を案じます。それは、久しぶりに集まった親戚が、それぞれの失敗を披露して、懐かしく思い出すこと。次々に語られる失敗談がほほえましい。失敗した自分を責める気持ちが薄れることはないにせよ、新しい明日を頑張ってみようかという前向きな気持ちになれる話です。
 どんな人間にも必ず失敗はつきもの。そんなときにどう立ち直るか、しっぱいをどう受け止めるか、よい指針になる話です。いつも頑張っている「よい子」なら、なお親近感を持って読める話かもしれません。自分や友だちの失敗を、今までと違った目で見られるようになると思います。そのあたりが感想文のテーマになるのではないでしょうか。
ちょっとまって、きつねさん! カトリーン・シェーラー/作 関口裕昭/訳
 迷子になったウサギのぼうやが、はらぺこキツネから逃げるお話。むじゃきそうなウサギの一言一言に、ついつい応じてしまうお人よしのキツネ、この手の童話の定番ですが、終わり方が楽しいです。 とんちのきいたウサギのセリフや、キツネの間抜けぶりも楽しいし、お父さんウサギを思いとどまらせた一言も、なんだかほのぼのします。
 低学年の子ならとても喜ぶ繰り返しの話ですが、感想文の題材としてみると、深まりは出にくいかもしれません。ウサギとキツネの行動に焦点を当ててもいいし、「やくそく」の言葉の力の持つ不思議な力に注目してもいいと思います。
てとてとてとて 浜田桂子/さく 
NDCの分類では316に入る絵本。『手』の働きに注目し、様々な手の動きを取り上げています。なでる、つなぐ、あたためるなど、『手』の持つやさしい働きや、拍手、手拍子手遊びなどの音楽的な側面だけでなく、手話や点字のような健常者が見落としがちな力にも、触れています。最後の「もしかしたら ては こころが 出たり入ったりするところかもしれない」というメッセージが、素直に伝わります。
 新しいことに気付く知識絵本としても楽しいですが、感想文を書くときには、『手』の動きにこめられた人の心に気がついてくれるといいですね。

3・4年生 小学校中学年の部

そいつの名前はエメラルド 竹下文子/作 鈴木まもる/画
 不思議な偶然で「ぼく」の家にやってきたペットはエメラルドホシトカゲ。火のついたろうそくが好物というエメラルドがやがて空に帰っていくまでの4ヶ月ほどの物語です。エメラルドが実はドラゴンだったというエンディングは予想通りです。
 感想文は書きにくいと思いました。自分のどの体験に引き比べて、何を主題として書いたらいいのか、大人の私には分かりにくいからです。この物語を読んで変容する部分とは、なんなのか?子どもに聞いてみないと分かりません。「ペットの招待はドラゴンだったら・・・」というアイディアが先立っている気がしました。
風をおいかけて、海へ! 高森千穂/作 なみへい/絵 
 もうすぐ5年生という春休み。スポーツ万能で人気者の拓人と、おとなしい秀才の一樹は『友だち未満』のクラスメイトです。それがなぜか40kmも離れた湘南の海へ、いっしょにサイクリングすることに。互いによく知らないまま、時にはケンカをしながらも走り続けるうちに、二人の気持ちが近づき始めます。「フシンシャ」のおじさんとの出会いで、新たな見方ができるようになった二人の、さいごに見せるハイタッチが爽やかです。主人公の二人の学校生活では見せない(分からない)家庭の様子に、案外共感できるかもしれません。ローディー・島本さんという導き手の存在が、印象的でした。
 物語の流れもとても素直で、感想文も書きやすいのではないでしょうか。
しあわせの子犬たち 文研ブックランド メアリー・ラバット/作 若林千鶴/訳
 エリザベスは、夏休みを過ごしに農場のおばあちゃんのところにやってきました。そこで、おばあちゃんの飼い犬、エルシーの出産に立ち会います。そして、生まれた5匹の小犬たちの飼い主を見定めながら、夏が過ぎていきます。どの子犬にも本当に必要としている家族を見つけられるようにと、厳しく飼い主を選んでいきます。こうして6匹の子犬たちは、新しい家族に幸せを運んでいきました・・・。子犬であれ、人であれ、本当に必要とされることの大事さは同じです。おばあちゃんの聡明さと、エリザベスの優しさが心に残ります。子犬の引き取り先はそれぞれ違いますが、どれも子犬の個性に合った家族で、子犬がいることで初めて家族が揃ったといえる家ばかりです。
題名の「幸せの子犬」は、存在それ自体が家族にとって幸せであることを表しているのでしょう。 一緒に住むペットの小さな命も、人間の命同様かけがえのない大切なものであることや、物言わぬペットに癒される心に気付いてほしいです。
オランウータンのジプシー 多摩動物公園のスーパーオランウータン ポプラ社 黒鳥英俊/著
 タイトル通り、ジプシーという「オラン・ウータン=森の人」をめぐる様々なエピソードが書かれたノンフィクションです。作者は長年類人猿の飼育に携わった動物園職員です。文章の端々に、オランウータンに対する深い理解と愛情が現れていて、とてもほのぼのした気分になります。「サル」とひとくくりにされ、ともすれば軽んじられることも多いオランウータンですが、殺伐とした人間社会より、よほど愛情深いことが分かります。子育てに悩む人の指針になるかもしれませんね。終章では、人間の都合による自然破壊の実態が紹介され、中学年なりの社会的な視線も持つことができます。 読み聞かせできないくらい文量が多いです。内容も小さなエピソードの積み重ねなので、どこに焦点を当てるかで、感想文のタイプが変わってきそうです。(自然保護、飼育員との交流、プシーの賢さ、家族の愛情など)

       5・6年生 小学校高学年の部

春さんのスケッチブック 依田逸夫/作 藤本四郎/絵 
 中学受験に失敗し落ち込んだぼくは、とうさんとケンカして、長野の春おばさんのところへ家出してしまいます。ぼくは受験なんてしたくなかったのに、とうさんが勧めるから・・・。受験のための2年間で学校での友だちも失くしているぼく。迎えてくれた春おばさんは、ぼくに1冊のスケッチブックを見せ、第二次世界大戦前夜の思い出を語ります。
 長野にある戦没画学生の「無言館」をモチーフに、今を生きることの大切さを押し付けがましくなく、考えさせてくれる物語です。現在のぼくの物語に入れ子構造で語られる春おばさんの思い出が、心に響きます。文章自体はとても読みやすいですが、戦争・無言館という重い題材を、どう自分に結びつけるのか。高学年ならではの人生観が問われる題材です。
ぼくの羊をさがして ヴァレリー・ハブズ/著 片岡しのぶ/訳
 飼い主の事情により、牧羊犬・ボーダーコリーの子どもは、売りに出されてしまいます。子犬は、様々な人間に関わりながらも、牧羊犬としての誇りと使命を忘れることなく、真剣に生きていきます。時には卑屈に、しかし、ここぞというときには勇気を持って、過酷な人生(犬生?)に立ち向かっていく様子に、自分の生ぬるい生き方を反省させられます。
 最後に巡りあった少年が、里親を待ちすぎて投げやりになってしまった孤児・ルーク。一目で少年の優しさを見抜いた子犬は(既に成犬?)、ようやく自分の「名前=ジャック」を手に入れるのです。ルークに出会うまでの自分は、牧羊犬としての生き方が出来なかったから。ジャックの牧羊犬としての最初の「仕事」は、精神的に迷子になってしまっているルークに、本来の明るさ取り戻させることでした。ハッピーエンドです。
読書感想文のポイントは、自分が自分であることを見失わずに、困難を乗り越えていく子犬の成長でしょうか。様々な人との出会いは決して人事ではなく、反面教師として自分のあり方に立ち戻らせてくれます。感想文を書きやすい本だと思います。
ヨハネスブルクへの旅  ビヴァリー・ナイドゥー/作 もりうちすみこ/訳
 南アフリカ共和国で1994年まで存続していた人種差別政策「アパルトヘイト」の時代の様子を生々しく描いた作品です。主人公ナレディは貧しい黒人の少女、13歳です。幼い妹の病気を知らせるために、ヨハネスブルクで働いている母親に会いに、300qの道を徒歩で出発します。その旅の道中、ナレディは、これまで気づかなかった「アパルトヘイト」という厳しい現実に直面し、精神的に大きく成長していきます。日本にいては信じられないような人権侵害が存在し、それが人生の大きな壁となっていることに驚きます。しかし、「差別」という負の心は、誰の心にでもありうるもので、きれい事では済まされない問題です。現代の日本では、青臭いと称されるかもしれない、正義や平等、倫理について、深く反省させられる本です。
 高学年の子どもが、この作品の持つ静かな怒り、社会的な視線、政治的な立場を、どこまで共感できるのでしょうか。主人公に共感しながらも、単なる同情に陥ることなく読み取れることを期待したいです。
マタギに育てられたクマ 白神山地のいのちを守って(感動ノンフィクション)金治直美/文
 タイトルを見るとクマの成長物語のようですが、実は違います。子グマを養う吉川さんの語りを通して、大自然がそのまま残る山中に、今なお受け継がれるマタギの生き方、考え方を伝えてくれる本です。『地球にやさしく』などと「上から目線」で自然保護を訴えるのではなく、人間は『母なる大地』の子、自然に生かされている命のひとつであること。かつては誰もが心に抱いていたはずの、自然への畏敬の念を思い出させてくれます。
読書感想文の題材としては、案外難しいかもしれません。これだけ禁忌の失われた社会の中で、いまや風前の灯とも思えるマタギの考え方に、今の子どもたちがどれだけ共感できるのでしょうか。クマと吉川さん一家の温かな交流に目が行ってしまうと、深まりがなくなりそうに思いました。

低学年用の図書便りから
 みなさん、もうすぐなつ休みですね。なつといえば、読書(どくしょ)です。そこで今回(こんかい)は、よんで作文(さくぶん)()くための(ほん)(しょう)(かい)します。
 クラスにも、
じゅんばんに(まわ)しますので、ぜひよんでみてください。その(ほん)(なか)からえらんで作文(さくぶん)をかいてもいいし、じぶんのすきな(ほん)をえらんでかいてもいいです。今年(ことし)のなつの1さつとして、あなたはどれをえらびますか?

1・2年生(ねんせい)

おこだでませんように

くすのき しげのり 作 

石井 聖岳 絵

みなさん、先生やおうちの人からおこられたことがありますか? この本に出てくる「ぼく」は、まい日おこられてばかり。ちゃんとわけがあるのに、きいてもらえません。そこで、七夕のおねがいごとを書くときに・・・。

しっぱいにかんぱい!

宮川 ひろ 作 

小泉 るみ子 絵

いつもリレーのせんしゅになって、かつやくしてきた加奈。yところが、たいいく大会の日、大しっぱいをしてしまいます。すっかり元気がなくなった可奈に、みんなが話してくれたないようは・・・?

ちょっとまって、きつねさん!

カトリーン・シェーラー 作

関口 裕昭 訳

うさぎのぼうやが、はらぺこおおかみに会いました。ところが、ぼうやは、ちっとも あわてません。おおかみに、ある「やくそく」の話をします。するとおおかみは・・・。

てとてとてとて

浜田 桂子 作

 手って、ふしぎ。にぎったり、なでたり、つないだり、あたためたり。はく手だってできるよ。それから、それから。ふだんはぜんぜん気にしていないけれど、手はとてもすてきな力をもっていますね。手があれば、お話だってできるのです。


中学年用の図書便りから
みなさん、もうすぐ夏休みですね。夏休みといえば、読書感想文です。そこで今回は、読書感想文の課題図書を紹介します。各教室にも、順番に回しますので、ぜひ手にとってみてください。その中から選んで感想文を書いてもいいし、ほかに自分の好きな本を選んで書いてもいいです。今年の夏の1冊として、あなたはどの本を選びますか?

中学年の部

そいつの名前はエメラルド

竹下 文子 作

鈴木 まもる 画

 ふしぎな出会いで「ぼく」の家にやってきたペットはエメラルドホシトゲ。火のついたろうそくが好物というエメラルドは、ぼくの家の大事な家族になりました。ところが、ある日エメラルドがさなぎになったのです。エメラルドの正体はいったい何なのでしょうか。エメラルドとすごした4か月ほどの物語です。

風をおいかけて、海へ!

高森 千穂 作

なみへい 絵

もうすぐ5年生という春休み、スポーツ万能で人気者の拓人と、おとなしい一樹は『友だち未満』のクラスメイトです。それがなぜか40kmもはなれた海へ、いっしょにサイクリングすることに。おたがいによく知らないまま、時にはケンカをしながらも走りつづけるうちに、二人の気持ちが近づき始めます。「フシンシャ」のおじさんとの出会いで、新たな見方ができるようになった二人の、ハイタッチがさわやかです。

しあわせの子犬たち

メアリー・ラバット 作

若林 千鶴 訳

むかい ながまさ 絵

 エリザベスは、夏休みを過ごしに、いなかのおばあちゃんのところにやってきました。そこで、おばあちゃんの犬、エルシーの出産に立ちあいます。生まれた5匹の小犬たちの飼い主を見定めながら、夏が過ぎていきます。二人は、どの子犬にも本当に必要としている家族を見つけられるようにと、きびしく飼い主を選んでいきます。こうして子犬たちは、新しい家族に幸せを運んでいきました。そして最後に残ったアナベルの行き先は・・・。

オランウータンのジプシー

黒鳥 英俊 著

多摩動物園にいるジプシーという「オラン・ウータン=森の人」をめぐるいろいろなエピソードが書かれたノンフィクションです。作者は長い間年類人猿(るいじんえん)(サルの仲間)を育ててきた人です。黒鳥さんは、本当にオランウータンが大好きなんだなあということがよく分かります。これを読むと、オランウータンについて、とてもくわしくなりますよ。


高学年用の図書便りから
みなさん、もうすぐ夏休みですね。夏休みといえば、読書感想文です。そこで今回は、読書感想文の課題図書を紹介します。各教室にも、順番に回しますので、ぜひ手にとってみてください。その中から選んで感想文を書いてもいいし、ほかに自分の好きな本を選んで書いてもいいです。今年の夏の1冊として、あなたはどの本を選びますか?

高学年の部

春さんのスケッチブック

依田 逸夫 作

藤本 四郎 絵

中学受験に失敗し落ち込んだぼくは、とうさんとケンカして、長野の春おばさんのところへ家出してしまいます。ぼくは受験なんてしたくなかったのに、とうさんが勧めるから・・・。受験のための2年間で学校での友だちも失くしているぼく。迎えてくれた春おばさんは、ぼくに1冊のスケッチブックを見せ、第二次世界大戦前夜の思い出を語ります。
 長野にある戦没画学生の「無言館」をモチーフに、今を生きることの大切さを考えさせてくれる物語です。高学年ならではの人生観が問われる題材です。

ぼくの羊をさがして

ヴァレリー・ハブズ作

片岡 しのぶ 訳

 飼い主の事情で、売りに出されてしまった牧羊犬・ボーダーコリーの子犬。いろいろな人と出会いながらも、牧羊犬としての誇りと使命を忘れずに、真剣に生きていきます。ここぞというときには勇気を持って、厳しい人生(犬生?)に立ち向かっていく様子は、とてもかっこいいです。最後に出会った少年・ルーク、一目で少年の優しさを見抜いた子犬は、ようやく「自分の名前=ジャック」を手に入れるのです。ジャックの牧羊犬としての最初の「仕事」は、心が迷子になってしまっているルークに、本来の明るさ取り戻させることでした。
 読書感想文を書くときのポイントは、自分を見失わずに、困難を乗り越えていく子犬の生き方でしょうか。様々な出会いや苦労は、私たちの人生にも待っているかもしれませんね。

ヨハネスブルクへの旅

ビヴァリー・ナイドゥー作

もりうち すみこ 訳

橋本 礼奈 画

南アフリカ共和国で1994年まで続いた「アパルトヘイト(白人を黒人より上に見る考え方)」の時代の様子を書いた作品です。主人公ナレディは貧しい黒人の少女、13歳です。幼い妹の病気を知らせるために、ヨハネスブルクで働いている母親に会いに、300qの道を徒歩で出発します。その旅の道中、ナレディは、これまで気づかなかった「アパルトヘイト」という厳しい現実に直面します。日本にいては信じられないようなことが次々起こることに驚きます。正義・倫理について、深く反省させられる本です。
 高学年のみんなに、この本の持つ静かな怒りが分かってほしいと思います。

マタギに育てられたクマ

金治 直美 文

タイトルを見るとクマの成長物語のようですが、実は違います。子グマを養う吉川さんが、大自然の中に生きる「マタギ」の考え方を教えてくれます。よく『地球にやさしく』といいますが、もともと自然は守ってあげるものではなく、人間のほうが自然に生かされているのです。機械文明が発達する前、だれもが心に抱いていたはずの「母なる自然」をありがたく思う気持ち思い出させてくれます。
 読書感想文を書くのは、案外むずしいかもしれません。人間中心の時代に生まれ育ったみなさんに、マタギの考え方の根っこのところが伝わるとよいのですが・・・。